天才はどこだろう。
私たちに感動以上の何か、人生の枠を変形させうる、想像を上回る喜びを与えてくれる他者。
天才とは他力本願の別名だろう。
自分の努力を肩代わりして、その利益を私へともたらしてくれる誰か。
あくたの死に際の主人公・黒田マコトは文才と人間的魅力に溢れた物書きである。
彼はすばらしい人々と巡り合い、すばらしくない人々から捨てられ、捨て、当然だが漫画のような人生を謳歌していく。
鼻血を出しながら小説を書ける人間は、それだけでは天才ではない。
そんなことをいえば、私とて水や電気が止まった状態で精神を病みながら小説を書いていたし、書き続けている。
小説家はどこだろう。
商業的に成功しているだけの作家を、私は小説家と呼ばない。
私はどこから来て、小説家になっていくのか。そして、最後にはどこへ行くのか。
黒田マコトというプリズム、わずか一巻分の厚さのそれを通して、私は、私の死に際を垣間見た。